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上告趣意書(本人)6

第六 刑訴法第318条(自由心証主義)は憲法第31条(法定手続きの保証)に違反する

 1.裁判官が被告人にとって有利な証拠にはすべて目を塞ぎ、不利な証拠だけを拾い集めて犯行シナリオを構築するようなことがあれば刑事裁判の原則にもとる。

 また、客観的な証拠によらずに偏見と悪意を基にして物事を被告人に不利に解釈しようとすれば、被告人のなんでもない日常行動ですら、真犯人の状況証拠であると、いくらでもこじつけることが出来てしまう。

 刑事訴訟法318条が証拠の証明力について、このように勝手気ままな裁判官の心証形成を許しているのであれば、これは法の定める手続きによらずに刑罰を科すことに該当するのであって、絶対に許されない。 

 2.本事案において裁判官が勝手な証拠解釈を行った事例は数多くあるが、すでに一審の最終意見陳述や控訴趣意書、上申書等で縷々、主張して来ているので、ここではそれらの内のいくつかを列挙するにとどめる。いずれも客観的事実に反するか、あるいは証拠によらぬ憶測、証拠を歪曲した解釈である。

 仮にも一人を処罰する結果となるのに、裁判官がこのように勝手な証拠解釈をなし得るとは驚かざるを得ない。
 

  (1)歯科カルテと変死体歯牙の不一致について

 原判決は

「歯科診療録の記載と死体の治療状態が合致しないのは伊波医師が保険請求の都合上診療録に実際に施行した治療内容を書かず保険適合治療をしたように記載したためであることが認められる」<11丁>と判示している。

 しかしながらカルテ(歯科診療録)の記載と死体歯牙との相違は、単に伊波医師が保険請求のために意識的に虚偽記載したことでは説明がつかない。以下に、カルテと死体の相違点を列記する。

   変死体の上前歯3本(左上12番及び右上1番)が欠損していて、昭和40年から同45年ごろの治療でブリッジされているのに、、同5264日作成の佐藤名義の歯科診療録表紙部分の記載によれば、右3本の歯は欠損していないことになっている。

   同様に、同54626日作成の歯科診療録表紙部分にも、右上前歯3本は現存するように記録されている。

   歯科診療録の同5266日欄には右上前歯3本を含んで歯槽膿漏の治療が行われた記録がある。(P cur)

   同年10月5にも右同様の治療記録がある。

   531030にも右同様の治療記録がある。

   54630にも右同様の治療記録がある。

   53116日には欠損しているはずの右3本の歯を消毒・治療した記録がある。(Sp)

   531120日には欠損しているはずの右3本の歯を含む、上下合計12本の前歯の交合調整を行った記録がある。

   54626日にも、前同様の治療の記録がある。

   死体の上前歯右2番から左3番にかかるブリッジ義歯について、左上2番の陶歯が破損したため、この部分をレジン歯で補修し、この治療時期が同52~3年ごろだと思われるのに、佐藤松雄名義の歯科診療録の同526月から546月までには治療の記録が無い。

    <抹消>

   (死体の)左上67番の欠損歯には局部義歯ダブルアイバー・パーシャルデンチャーを施療していると推定されるのに、佐藤松雄は同53124日に保険治療によって一床二歯のレジン歯義歯を入れたように歯科診療録に記録されている。

   変死体の左上3番歯にはクラウンブリッジの支持歯としての治療痕しかないのに、歯科診療録の同531030日には、本歯と左上45番の3本の鈎歯調整を行った記録がある。(従って3番歯にも)義歯装着のための切削痕がなければならないのである。

   変死体の左下前12番歯は欠損していたが、歯科診療録上では現存しているように記録されている。

   変死体の右上5番歯については、歯根部を残して歯冠部は欠損しているが、歯科診療録上、佐藤の同歯は現存している。

   変死体の右奥歯上下67番については咬合調整の治療痕が存在しているが、佐藤の診療録にはそのような治療の行われた記録が無い。

 

 以上のように本件死体とカルテの記載は、実に16箇所の相違点があり、どの一つをとっても本件変死体と佐藤松雄は別人であることを示しているのである。

 (相違の理由について)原判決が、保険適合治療を行ったように虚偽記載したのだと認定しても、それは右項目のうちのの義歯装着を説明できるに過ぎず、また、「現存する歯の数の違いは時の経過に伴う抜歯、あるいは脱落と見ることが出来」<原判決9丁>るとの認定も項の2本の歯を説明できるだけである。

 伊波歯科医院での治療を終えたのが昭和54630日であり、それからわずか1年後に死亡したとすれば、その間に(別の歯科医で)抜歯するほどの治療が新たに行われたと考えるのは不自然である。この1年間、佐藤が健康保険証を使用していなかったことも、新たな治療などなかったことを裏付けている。

 一般的にはカルテに虚偽を記載することは歯科医師法に違反する重大な犯罪である。不正に保険を請求することと、歯科診療録に虚偽記載することとは直接的には関連がない(にも拘らず、犯罪という危険を冒すだろうか)。

 仮に、伊波医師が保険請求書に合致するように診療録に虚偽を記載したとするなら、右⑩⑮⑯項については不合理である。保険を正当に請求できる治療を記さなかったことになる。

 数多くの相違点につき合理的な説明をしないで本件死体と歯科診療録の記載に矛盾は無い、と認定した原審裁判官は自由心証主義の許容範囲を逸脱しているといえる。

 
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