(5)段ボール箱は入手できたのか
現判決は
「当審における検証の結果でも、被告人が述べているような方法で段ボール箱等の入手が出来ることが確かめられている」<32丁>と述べている。
しかし実際の検証では段ボール箱は入手できなかったのだから、このように原審が虚偽を述べるのは理解に苦しむ。
原審の平成元年6月16日付検証調書(三)の記載によれば、西島船具店における検証の結果、「同店で、検証当時入手し得た大きめの段ボール箱としては、写真⑱および⑲の段ボール箱各1箱であった」となっている。
そして写真⑱と⑲に記された段ボール箱のサイズはそれぞれ、52×52×52センチメートル、67×62×57センチメートルだった。これらはいずれもブルーバード乗用車の後部座席に積めないので、本事案の段ボール箱とするには不適当。レンタカーの見分調書<一審甲154号証>によればブルーバード乗用車の後ろドアの幅は50センチメートルだから少なくともこれ以下のサイズでなければならない。
以上の結果で、原審の検証によっては求める段ボール箱は入手できないことが確かめられたのである。
さらに補足すれば、一審における裏付け捜査の結果でも、死体の梱包が可能で、しかもブルーバード車の後部座席に積むことの出来るサイズの段ボール箱3枚を入手することは出来なかった(昭和62年6月3日付、白石忠司捜査報告書)。本事案においては、犯行に使用したといわれる段ボール箱を入手できることの証拠は一切提出されていない。