上告趣意書(本人)11

  (6)死体遺棄の自白はあったのか

 原判決は

「被告人がその場所に佐藤の死体を放置してきたと供述し、それに基づきそれまで身元不明とされてきた死体について再検討がされた結果、右の死体が佐藤松雄であることが確認された」<45丁>と述べ、また第一審判決でも

「被告人が5年前の昭和55725日、筑紫野市郊外の三郡山山中の杉林の中に佐藤の死体を放置してきたと自供し、その場所を図示した」<32丁>と述べている。

 被告人が死体遺棄の自供をしたというのだ。ところが、被告人がこのような自供をしたと言う証拠は何も無い。

 裁判官が拠り所としている佐々木善三検事の伝聞証言にしても

「川の中で転倒して顔面を打った佐藤さんを抱えて引っ張りあげて、怪我をしているのを放置してきた」<速記録419,420丁・要旨>というだけのことであるし、何よりも、この自供したとされるその日に被告人が作成した自供書<乙43号証>にも死体遺棄の記述がない。

「私は最初、直ぐに人を呼びに行こうと考えたが、佐藤さんの様子があまりに弱っている様子であったし、もしかしたらこのまま死んでしまうのではないかと考え(中略)10分間その場で躊躇した結果、このまま放置して行ってしまおうと決心した」

との記述からも、生存している状態で佐藤と別れてきたと供述していることは明らかである。佐藤の死体を遺棄してきたというのとは根本的に異なる。

 原判決は証拠に基づかずに勝手な事実を決め付けている。

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