上告趣意書(本人)14

  (9)銀行取引処分の原因について

 原判決は 「被告人が、小切手の支払いが出来なくて昭和55728日に銀行取引停止処分を受け」<55丁>

「佐藤が1000万円を出さなかったため、被告人の経営する会社が銀行取引停止に追い込まれた」<72丁> と判示する。

 ところがこの事実認定は客観的事実に反するのであり、一審以来、何度も被告人は証拠を提示して事実を明らかにしてきた。裁判官がいかに被告人の趣意書や上申書の記述に目を通さないか見えるようだ。

 銀行取引停止処分は、不渡り事故を2度出すことで生じるのだから、右処分の直接の原因としては2度目の不渡り事故を論じなければならない。

 被告人の2度目の不渡りは昭和55724日付で額面49210円の小切手を落とさなかったことであることが証拠上明らかになっている。そしてこの日に被告人が小切手を不渡りにした理由は、決済資金に窮したためではなく、佐藤との取引を有利に運ぶために、意図して行ったものであることについては、一審以来主張している通りである。

 724日の時点で、被告人が少なくとも、スナック「メイ」の従業員給料約70万円や、福岡への航空運賃を含む多額の旅費等を所持していたことについては、原判決も認めるところである。従って小切手の49210円の決済資金に窮していなかったことは明らかだ。

 被告人が銀行取引停止になった理由は小切手の支払いが出来なかったためではなく、意図して支払いをしなかったためである。また、前述したように、不渡小切手の額面は49210円だったのであって、原判決の認定するような、佐藤が1000万円を出さなかったためではないことは言うまでもない。

 原判決の事実認定は、何の根拠もなくて勝手になされたものである。

 

 

 

 
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