上告趣意書(本人)15

  (10)対立関係の不存在について

 原判決は

「このこと(被告人が銀行取引停止になったこと)から生じた両者の軋轢が原因で佐藤殺害にまで発展したもの」<72丁>と判示し、一審判決でも

「その背景をなすのは被告人と被害者の間で犯行前に生じた金銭的、感情的対立である」<106丁>という。

 しかしながら前述したように、犯行日とされている725日の時点において、被告人と佐藤との間になんらかの対立関係があったのかどうかについては、検察官も主張していないし、いわんや裁判で証拠調べも行われていない。(そもそも取引停止日時は28日で、犯行日より遅い)

 被告人が銀行取引停止になった原因は、本人の意図によるものであって、佐藤の行為が原因になったものではない。従って、会社が倒産したことで佐藤と被告人間に対立関係が生じる余地など全くないのだ。対立関係などなかった証拠については原審に提出した上申書101頁以下に詳述したとおりである。

 原判決の認定は客観的事実に反していて、他になんらの証拠にも基づかぬ単なる憶測に過ぎない。

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