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2.予断に基づいている

 

第一  憲法違反

 原判決には、に述べるような憲法違反があるから、原判決破棄されなければならない


一、予断に基づいた不公平な裁判 (法三七条一項違反

 憲法三七条一項は「すべて刑事事件においては、被告人は、公平な裁判所の迅速な裁判受ける権利を有する」と規定するところ、右に言「公平な裁判所の裁判」を受ける権利とは、有の予断に基づく裁判受けない権利を保障するのであることは言うまでもない。

 しかしながら、原は明らかに被告人に対する有の予断をもって審理にあたった。

 このことは、原判決には被告人に対し故意に不当目的をもって被告人を殊更悪し様に罵っているとしか考えられない判示や、明らかに証拠に基づかず「予断」「想像」に基づいて判断したとしか考えられない箇所が何箇所もあることからも明白である。

 原判決は憲法三七条一項に違反し、破棄されなければならない。
 

 1.原審は、被告人が昭和六〇年七月一六日に逮捕されて以来、被告人の佐藤殺害事実に関する供述が目まぐるしく変転していることの説明として、次の通り判示する。

    「取調開始後八月二九日に至るまでの間の佐藤の死体遺棄場所に関する供述は、捜査官から太宰府山中の死体が佐藤でないことを聞かされていた被告人が、捜査官の誤信に乗じ、後記のとおり当面のアリバイ証明を目論むと共に、その場所で佐藤と別れたとかそこに佐藤の死体があるなどと供述することで捜査を混乱させる一方、その付近から五年前に変死体が発見されていることが判明しても、同変死体は各種データの照合の結果既に佐藤でないものとして確認ずみであることを捜査官から聞かされていたことから、自己の犯行に結び付くおそれはないものと判断したことによるものと考えられ、この被告人のシナリオによる場合には死体遺棄場所について真実を語らなければ有効にその目的を達成することができない関係にあるから、右期間の死体遺棄場所に関する被告人の供述は、信用すべき背景事情のもとでの供述ということができる…。

 八月二九日及びその直後の被告人の自白は、妻との離婚や佐藤の死体発見により自己の防御シナリオが崩れたショックが重なった時期のもので…その時点における供述には作為が少ないとみることができる。」 (原判決27丁裏~29丁表。傍線弁護人。以下同様)

 しかし、「被告人のシナリオ」あるいは「被告人の防御シナリオ」とは一体何であるのか。

 このような「シナリオ」など被告人が供述したこともなければ、記録の中にも現れておらず、検察官すら主張していないものであって、唯一、原審裁判官の予断によって作り上げられた仮説にしか過ぎないものである。

 「証拠」に基づかず「想像」「仮説」だけで判決をする裁判所が公平であるはずがあり得ない。


 2. 被告人が捜査段階において、佐藤殺害の事実は否認しながら、佐藤との九州の話や太宰府山中のことを自分から言い出した理由について、原判決は次の通り判示する。

   「被告人は、捜査官にあれこれ質問して九州太宰府で佐藤の死体が発見された事実がないかどうかを聞き出し、捜査官から、太宰府山中から出た死体は照合の結果佐藤でないことが確認されているという回答を得、そこで初めて佐藤と太宰府の山中に行ったことがありその日が昭和55年7月25日であると具体的な日時や場所を言い出したことが認められるのであって、被告人が九州旅行のこととか、太宰府の山林のことなどを供述するに際し、慎重に機を窺い被告人なりに供述結果の安全性を確かめたうえで言い出した経緯が窺知できることからすれば、被告人は、捜査官が太宰府山中の変死体が佐藤でないと誤信しているのを奇賃とし、敢えて太宰府の山中のことを持ち出し、捜査官が考えている佐藤死亡の時期より遅い時期まで佐藤が生存していたことを主張して当面のアリバイを証明するとともに、佐藤が自己の行為と関係なしに死亡したことを印象付け、もって佐藤殺害事実を闇に埋もれさせようとしたものと考えられる。」(39丁表~40丁表)

 どうして右認定にあるような供述の経過から、「佐藤殺害事実を闇に埋もれさせようとした」との評価になるのであろうか。

 被告人が佐藤を太宰府山中で殺害したのであれば、まして捜査官が変死件を佐藤でないと誤信しているのであればなおさら、佐藤の死体の在りかなど自分から供述するはずのないことは、誰が考えても明らかではないか。

 それが 「当面のアリバイ」工作であるとしか考えられないのは、被告人に対し予断を持っているからであり、「佐藤殺害事実を闇に埋もれさせようとした」 とまで表現されたのでは故意に不当な目的をもって被告人を殊更悪し様に罵っているとしか考えられない。


 3. 被告人が佐藤殺害の事実を認めながら、その細部について供述をしなかったり、供述内容が区々であることについて、原判決はそれが不自然ではないと説明するに際し、

  「犯人が事件の大筋を認めても、その動機とか、計画性の有無、或は犯行の一部(本件の場合、例えば被告が特にこだわる男性器切除の事実)に隠しておきたいことがある場合には、その点に関して虚構のことを述べる事例は珍しくなく…」 (30丁表)

旨判示しているが、記録に照らしても被告人が男性器切除に特にこだわっていることなどどこにも現れていない(しいて言うならば、原審弁護人が強く指摘しただけである)。

 しかも右判文に照らせば、原判決が右「男性器切除」に特別な意味を持たせ、何やらそこに被告人に疚しいところがあるかのように見せ掛けていることが明瞭に窺えるのであって、被告人に対する極めて悪意に満ちたシニカルな表現となっている。


 4.原審の予断に満ちた姿勢を端的に表す事例は他にもある。それは原審において平成3年3月15日に段ボール箱に梱包した人体を乗用車後部座席に積み込むことができるかどうかの検証をした際の主任裁判宮の態度である。

 原審弁護人は、弁論の中で原審の検証の問題点として、次のような指摘をした。

   「当審における平成3年3月19日実施の検証では、重量について佐藤の体重より約10キログラムも重いダミーを用いて行われた(ダミーを65キログラムにすれば、総体では70キログラムを越えるはずであったが、その重量では行われなかった)という問題があるほか、その他の条件についても、使用した段ボール箱が新品のしっかりしたものであること、二つの段ボール箱を重ねた後にビニール紐を横に四か所かけて強く結び、縦にも十文字にビニール紐をかけて強く結んだこと、さらにその縦横の交差部分を結んで動かないように画定したため、作業はかなり準備のよい、やりやすいものとなっていたことを考慮する必要がある。

   しかも、仮想加害者がこれをブルーバードに積み込む際も、どこの部分が引っ掛かっているというようなアドバイスを周囲の者が提供していて、作業には大きな助言となっていた。」(控訴審 弁論要旨190頁)

 ところで、これらはいずれも原審主任裁判官が行ったのである。

 即ち、主任裁判官は、検証の事前準備の段階での弁護人との打合せでは、段ボール箱に積み込むダミー及び鉄アレーの重量は合計65kgとするという申し合わせであったのに、検証当日になって急遽、ダミー及び鉄アレーの重量を65kgとしたのでは段ボール箱の総重量が70kgを越えてしまうという理由で鉄アレーを一つ取って重量を56.5Kgにまで軽くした。

 これは既に主任裁判官において検証の下準備を行わないかぎり、分からないはずのことであって、主任裁判官が検証に先立ち、予めどうすれば検証を成功させることが出来るかを検討していたことを示すものにほかならない。

 また、仮想加害者が段ボール箱の梱包をするのが検証の趣旨からして当然であるのに、あえて主任裁判官がこれを行い、しかも丁寧に時間をかけて段ボール箱に縦横に何重にもビニール紐を緩みの出ないように縛り上げ、更に縦横のビニール紐の交差部分も丁寧に結びあげた。

 その結果、実際の積み込み検証では、ビニール紐を引っ張って段ボール箱を持ち上げてもビニール紐に緩みが出ず、積み込み作業が極めて容易になった。

 これも一度試してみて初めて緩みの出ないビニール紐の縛り方が判明するのであって、予め下準備をしていない限り思い付かない準備と言わざるを得ない.

 また、主任裁判官は仮想加害者に検証中終始、やれ段ボール箱のどこが引っ掛かっているとか、やれどこを持ち上げろなどとアドバイスを与え、段ボール箱積み込み検証を何とか成功させようと奔走した。

 そして、段ボール箱の自動車への積み込みが完了したときにひとり大きな拍手をしていたのは主任裁判官であった。

 以上の検証中の主任裁判官の態度に照らせば、主任裁判官が是が非にも積み込み検証を成功させようとしていたことは明らかであって、被告人の自白どおりに段ボール箱を積み込むことが可能かどうかを公平な目で検証しようという姿勢は全くなかった。

 段ボール箱の積み込み検証が失敗したのでは有罪判決が書けないことからくる、異常なまでの執着心のみが明瞭に感じられた。

 これは検証に立ち会ったすべての弁護人が、そして被告人が目撃した事実である。

 弁護人は、原審では当然のことであるから、あえて言葉に出して述べなかったが、上告審ではこのことを声を大にして主張せざるを得ない。

 原判決は、被告人は有罪であると信じこんでいた主任裁判官によって作り上げられたものであって、「証拠」に基づかず、主任裁判官の有していた「予断」に基づいて言い渡されたものである。

 

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